『揺れ疲れ』地震の後の症状

公開日: : 最終更新日:2016/05/15 家づくり計画

揺れ疲れとは

『揺れ疲れ』

今回、熊本地震でよく聞くようになりました。

大きな地震が来た時持ち堪えたにも関わらず、再び大きな揺れが起こると持ち堪えられなくなり、いともあっさりと倒壊してしまうという現象。

1度目の大きな地震で構造面にダメージを受けてしまっているわけです。

壁に覆われているため、目には見えにくいため、一見大丈夫そうな家が倒壊します。

揺れ疲れ立証実験

よくTVで流れていた映像です。

左:耐震補強を施した家 右:耐震補強なしの家

1度目の揺れ

1度目の揺れで耐震補強を施した左の家は持ち堪え、耐震補強なしの右の家は倒壊します。

倒れる瞬間の形状は熊本地震で特徴的だった、1階が潰れ2階がのしかかるように倒れています。

2度目の揺れ

残っているのは左の耐震補強を施した方の家。

揺れが始まると、揺れに耐える事もなく、あっさりと壊れてしまいます。

 

熊本地震の場合

2016年4月14日に、最大震度7の地震が1度めの揺れ。

2016年4月16日に、最大震度7の地震が2度目の揺れ。

古い家屋が倒壊するのはこれまでの地震でも分かっていた事でしたが、この大きな地震が立て続けに来た熊本地震で明らかになった事は、耐震構造の新しい建物まで倒壊するという事。

そして、その原因が『揺れ疲れ』であるという事。

 

大きな揺れが何度も発生する直下型地震は、熊本地震が初めてではない。

2004年10月23日に発生した「新潟中越地震」は、大きな揺れが何度も発生している。

新潟中越地震⇒

なせこの地震の時にそれが話題にならなかったのかというと、住宅密集地ではなかったから。

山の中を中心にで起こっていたらしい。

そのため、今回の熊本が『揺れ疲れ』という症状が初めて大きな課題となって現れた。

なぜ揺れ疲れが起こるのか

私も初めて『揺れ疲れ』という症状を知ったため、他のネットサイトなどで調べてみた。

「1度目の揺れによる、柱や梁の損傷」と書かれてあった。

ちょっと漠然としていて納得がいかないので自力で考えてみた。

あくまでも中途半端に建築を勉強している私の見解なのであしからず。

基礎を固定しているから

今の日本の家は基礎を強固に作り、その上に家をガッチリと止めている。

これは揺れが来ると振り回される原因となる可能性がある。

例えば、割りばしで作った家の模型があるとしましょう。

それを下敷きの上に置いて、セロテープで足元を固定する。

それを揺らすと、家は振られて歪みながら左右に揺れる。

柱と梁が平行四辺形に変形しながら揺れているはず。

セロテープ無しで、模型を乗せただけで揺らしてみると、家の形状を保ったまま左右に揺れると思います。

 

今の日本の建築の常識では、ガチガチに固定する事が地震対策だという考えが一般的でしょう。

でも、昔の日本家屋は固定はしていなかった。

石の上に置いただけというのが一般的な作りだったのです。

この『置いただけ』というのは、実は耐震構造の一種だったりする。

耐震というか、免震になるのかな?

一般住宅ではこういう構造の建物はあまりないかも知れないが、『置いただけ』で代表的な建物がある。

それは『五重塔』。

あれ、置いてあるだけで固定はしていない。

建物の中心に柱が1本立ってるだけで、石の上に柱が乗っかってるだけ。

何やら不安定な感じがするが、実はこれが五重塔の安定感を保っているのだ。

 

阪神大震災が来た時、京都では多分震度4だったと思う。

これであの細長い五重塔が何ともないというのは、『置いただけ』がポイントなのです。

地面が揺れても、揺れについていかないようになっている。

直下型の巨大地震に見舞われるとどうなるのかは分からないが、多少の揺れでは長細いクセに何ともないのだ。

柱が傾くと一気に強度がダウンする

またちょっと例えてみます。

マッチ棒を垂直に立てて上から指で押すと、そう簡単には折れませんよね?

折ろうとしても、指が痛くなるくらい強いはず。

でも、少し傾けて角度を付けた状態で真上から押すと、簡単に折れる。

この時の指の力が、1階の柱にかかる2階の重みや、2階にかかる屋根の重みという事になる。

 

建築というのは『矩手(かねて)』という言葉があります。

これは直角・垂直・90°という意味。

『矩』という文字は、「かなざし」とも読みます。

「かなざし」っていうのが何かというと、昔大工さんが首によく引っ掛けていたL字型の物差しの事。

建築は全てを90°に作る事で、強度が出てくるのです。

だから『矩(かなざし)』というのは、大工さんの必須アイテムなのです。

『矩形(くけい)』という言葉もありますよね。

角が90°の四角の事です。

 

矩手が取れていない状態は、強度が出ない状態という事。

建築の基本は『矩(かね)』なのです。

1階と2階の間の梁

『揺れ疲れ』の実験映像を見るとくの字に家が倒壊しているように見える。

1階部分の柱に重みが生じて倒れるのでくの字になるという理由もあるのだが、梁に揺れの勢いがついているとも考えられる。

 

除夜の鐘を思い浮かべてください。

あの鐘を打つ丸太。

持ち上げて鐘を打つと考えると、そう簡単には打てません。

でもヒモを付けると簡単に打てる。

もし鐘が無ければ、勢いづいてブーンで吹っ飛んでいこうとするでしょう。

 

これ支点・力点・作用点の物理学で考えると、地震と似てる気がする。

支点は違うが、力点は地面、作用点は梁として考えると、梁が除夜の鐘の丸太みたいに勢いがつく気がする。

梁に勢いがついていると考えると、くの字に曲がる可能性は大いにある。

吹っ飛んでいこうとする梁に、足元を固定された1階の柱は頭を引っ張られ、その場でとどまろうとしている2階の柱は足元を引っ張られるようにしてくの字になるのだろう。

これでつじつまは合う

一応、自分の頭の中ではつじつまが合った。

理屈っぽい性格だから、何だかんだと理由を知りたい性格なもので。

地震の揺れで基礎に固定された状態で揺れに家が振り回され梁にも揺れで勢いがつく。

柱が傾いて矩手を保てない状態で、何とか現状維持している状態の所に再び、いきなりの揺れが襲い倒壊につながるという事だろう。

傾いているのをどうやって知るか

業者さんに頼むのが一番いいのではあるが、震源地から離れていて自宅が気になるという人も多いだろう。

大きな揺れが起きた後、家の周りや中を確認した方が良いかも知れない。

くの字に曲がるという事は、外壁が破損していたり、どこかにヒビが入っている可能性がある。

外壁によっては割れにくい素材もある。

吹き付けのような仕上げだと、割れが如実に現れると思います。

内装も和室の砂壁などは割れが現れやすい。

家に割れや歪みが確かめられた時は、避難所に避難する方が賢明だろうと思います。

家が強度を失った状態であると確認できたら、そこに居る事は危険につながる。

強い構造の家

2階建てがことごとく潰れた。

これは当たり前の事。

平屋が強いというのは一般的に言われてきた事。

重心が低くなるから、揺れに振られにくい。

そして、底面積がある程度広ければさらに強い。

マッチ箱を机に置く時、みんな一番安定する底面積が広い面を下にして置くでしょ?

机が揺れても倒れない置き方をするよね?

物理的に安定する形状というのは、原理は同じ。

 

しかし家の場合は面積が広くなると、その家に屋根を付けると高くなる。

三角屋根は面積が広ければ広いほど、高さが付くようになってくる。

そして、そもそもそんな広い土地を持っている人がいない。

平屋で大きく作る家なんか、建てられる人は一部の人に限られてしまう。

とくに街中になってくると、縦に長い2階建てが多いと思う。

 

物理的に安定する建物が分かっていても、現実問題難しいというのが本音。


家を弱くしてしまう人

これやってる人多い。

大きな窓を壁一面に並べて開放的にしたいとか、部屋を広く大きく取りたいと大きな空間を作ってしまう。

これをやろうとして、設計に止められたのにも関わらず、言い張ってやろうとする人が多い。

窓のサッシが金属でできているから、家を支えている強いものと捉え違いをしている人が多い。

サッシが家を支えているんじゃない、家がサッシを囲んで支えているんだ。

広い部屋もそう。

あまり広く部屋を取ると不安定だから、柱や壁を一部に出すと「取って!」ってみんな言う。

間仕切り壁は部屋の仕切りだけの役目をしているんじゃない。

あれも家全体を支えている一部の構造体。

外側だけじゃない、中にも壁が多い方が強いんだよ。

 

設計ってね、『おしゃれ』な家を作るのが仕事じゃない。

みんな勘違いしている。

設計士の事をセンスが無いとか評価する人もたくさんいる。

設計士は『お洒落センス』なんか提供する仕事じゃない。

安定した構造の家を提供するのが、本来の設計士の仕事だ。

国家資格で「おしゃれ」提供する資格なんかあるわけないだろう。

 

止められたのに、なぜおしゃれ優先で強行しようとする?

お洒落な家と強い家は相反するところにある場合が多い。

多くの人が求めるお洒落な家は、弱い家と思っていい。

広~いお部屋に開放的な大きな窓が一面についたような家。

地震が来たら、ペシャンだ。

 

大きな地震が何度も日本には到来している。

阪神大震災、東日本大震災、他にもたくさんの大規模な地震が来ている。

いい加減消費者である家を買う側も、きちんと知識を持たなくてはいけない。

家は自分と自分の家族を守るもの。

お洒落なんか優先させるものではない。

設計と相談するのは、おしゃれじゃなく安全性だ。

 

消費者の要望がおしゃれに走り始めると、大手メーカーはお洒落を提供しようと奔走し始める。

大手がそれをやり始めると、他の会社もそれをやらないと『デキない』と評価され仕事が来なくなる。

業界全体が「おしゃれ」に引きずられ始めるのだ。

「おしゃれ」「接客対応」そんな事ばかりを建設業は評価されている。

結局評価されるとそちらに力を入れるようになる。

そうなると、家の構造面に良い影響は出ない。

 

お洒落な家はただ奇抜なだけ。

珍しい変な家を作れば目立つ。

目立つと「おしゃれ」と評価する。

 

接客対応を求めるあまり、接客係ばかりを用意し始める。

接客係に建築技術者などいない。

素人同然の人員が、素人のお客さんの要望を全て聞き入れてくる。

やってはいけない事も「できます」と言ってしまうのだ。

こんなのが日常茶飯事で起こる。

素人要員がお客さんの夢と希望を叶える事を最優先してしまう。

家が無駄に高いのだって、この「接客対応」という要望を叶えるために無駄に人員が多いから。

ほとんど、人件費だよ。

特に用もないのに呼びつける人や電話かけまくってくる人多いのよ。

 

接客対応を徹底的に丁寧にしてほしい人ほど、「高い!」って言う。

対応にほとんどの時間をとられるから、人数が多いんだ。

高いに決まってるだろ。

 

家は『生活必需品』

地震が来て再起が図れないような高級品にはなってほしくない。

無駄な事を要求すると、値段が高く高くなっていくだけ。

私はこういうあり方をあまり良くは思っていない。

正直、建築技術を持たない勉強不足の人材に、建築業界に転がり込んで来てほしくない。

混乱するんだ、全てが。

大勢の接客要員に金がかかり過ぎて、技術者が少ない。

大手メーカーなどは、建築技術を持つ者が半数もいないというのが本当のところ。

終いには接客要員揃える事を優先し過ぎて、技術を非正規や請負に任せている。

建築偽装問題が何度か起きて分からなかったか?

構造面の責任が下へ下へと流れて、終いには法人じゃなくて個人の特定が始まっただろ。

上に立つ企業や人材に技術が備わってない事を示しているんだよ。

建築業界がやらなきゃいけない事は、夢を叶える事じゃなくプロとしての技術の提供。

そして消費者の夢は「おしゃれ」じゃなくて、「家族を守る」という事。

根本的な夢を忘れてはいけない。

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